『おしいれのぼうけん』は、多くの子どもたちに親しまれてきた絵本でありながら、その内容の奥深さから大人になっても語り継がれる名作です。暗いおしいれに閉じ込められた子どもたちが体験する不思議な冒険や、ねずみばあさんという謎めいた存在は、読者の心に強烈な印象を残します。
本記事では、『おしいれのぼうけん』のあらすじや怖さの理由を紐解きながら、物語が読者に伝えたいメッセージや教訓に迫ります。また、親子で楽しむ読み聞かせのポイントや、学校の課題にも役立つ読書感想文のヒントもご紹介。
子どもにとって刺激的な冒険であると同時に、大人にもどこか懐かしさを感じさせる『おしいれのぼうけん』。親子の読書時間をさらに充実させるために、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
この記事はこんな人にオススメ
- 「おしいれのぼうけん」のあらすじ・内容を知りたい人
- 作者:古田足日さん、絵:たばたせいいちさんについて知りたい人
- 物語の解説が聞きたい人
- おしいれのぼうけんの怖さの理由を知りたい人
- 読書感想文の書き方ポイントが知りたい人
- 口コミや試し読みついて知りたい人
- おしいれのぼうけんの50周年記念グッズが気になる人
目次
おしいれのぼうけんのあらすじ・内容
『おしいれのぼうけん』は、1974年に初版が発行された、古田足日(ふるた たるひ)作、田畑精一(たばた せいいち)絵による絵本です。
保育園のお昼寝中、あきらがポケットから落としたミニカーをさとしが奪ったことにより、二人は布団の上を走り回ります。他の子どもを踏んづけてしまったことで先生に叱られ、罰として押し入れに入れられてしまいました。
最初は泣きべそをかくあきらと、反抗的な態度を見せるさとし。しかし、押し入れの暗闇の中で過ごす中、さとしはあきらに「さっきは、ごめんね」と謝り、代わりに機関車を渡します。二人は手を取り合い、閉ざされた空間の恐怖に立ち向かう決意を固めます。
決意を固めた二人ですが、やがて、押し入れの中の木目や影が次第に不気味な姿に見え始め、二人は恐ろしいねずみばあさんが支配する空想の世界へと迷い込みます。ミニカーと蒸気機関車を使って暗闇を突き進む冒険を始めますが、ねずみばあさんとその手下たちが二人の前に立ちはだかり・・・。
協力しながら困難に立ち向かう二人は、次第に友情を深め、互いに励まし合いながら危機を乗り越えていきます。物語は、恐怖や困難に立ち向かう勇気、仲直りや助け合いの大切さを描き出し、子どもたちの成長と想像力を育む感動的な名作となっています。
作者:古田足日さん
古田足日(ふるた たるひ)さんは、1927年に愛媛県で生まれた児童文学作家・評論家です。早稲田大学文学部露文科を中退後、児童文学の創作と評論活動に力を注ぎました。彼の作品は、子どもたちの心理や成長を丁寧に描きつつ、冒険や想像力を刺激する内容で多くの読者に愛されています。
代表作のひとつである『おしいれのぼうけん』は、保育園の押し入れを舞台に、恐怖と向き合いながら勇気を育む物語です。子どもたちの冒険心や想像力を刺激し、読者に仲間と協力する大切さを教える名作として知られています。また、『ロボット・カミイ』は、ユニークなロボットと子どもたちの交流を描き、夢と希望にあふれた作品として人気を集めています。
評論活動にも精力的に取り組み、『児童文学の旗』や『現代児童文学を問い続けて』などで、児童文学の意義や社会的役割について深く考察しました。古田足日は、生涯を通じて児童文学の発展に大きく貢献し、今なお多くの作品が読み継がれています。
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絵:たばたせいいちさん
田畑精一(たばた せいいち)さんは、1931年に和歌山県で生まれた絵本作家・画家です。京都大学理学部に入学しましたが、在学中に人形劇に興味を持ち、大学を中退して人形劇団プークに参加しました。その後、約10年間にわたり人形座で美術を担当し、人形劇の世界で経験を積みました。
人形座の解散後、絵本の世界に魅了され、絵本作家としての活動を開始しました。同じ東久留米市に住んでいた児童文学作家の古田足日(ふるた たるひ)との出会い、彼の作品『くいしんぼうのロボット』で挿絵を担当しました。
田畑氏の代表作の一つである『おしいれのぼうけん』は、古田足日との共作であり、長年にわたり多くの読者に愛されています。2020年6月7日、老衰のため89歳で逝去されましたが、その作品は今もなお、多くの人々に読み継がれています。
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何歳から読める?おしいれのぼうけんの対象年齢
『おしいれのぼうけん』の対象年齢は、絵本のカバーに「自分で読むなら小学生から、読んでもらうなら3・4歳~」と記載されています。しかし、80ページという絵本としては比較的長編であり、内容も少し怖さを伴う冒険物語であるため、3歳のお子さんには一度に読むのが難しい場合があります。
小さなお子さんに読み聞かせる場合は、1日数ページずつゆっくり読み進めるのがおすすめです。物語の展開に合わせて感想を話し合ったり、場面ごとに子どもの気持ちを確認しながら読むと、より物語の世界を楽しめます。また、ストーリーには恐怖や緊張感が描かれているため、怖がりやすいお子さんには事前に簡単なあらすじを説明しながら読み進めると安心感を与えられます。
一方、小学生以上であれば、自分で物語を楽しむことができるでしょう。特に低学年の子どもには、冒険や空想の世界を楽しめる要素が多く、読書への興味を引き出すきっかけにもなります。実際に、読書感想文で取り上げるお子さんも多く、物語を通じて考えを深める題材としても最適です。
サキ研究員
わが子も小学1年生の夏休みに、読書感想文で「おしいれのぼうけん」を選択しました。
このように、『おしいれのぼうけん』は年齢や子どもの成長に合わせた読み方ができる絵本です。読み聞かせと自主読書の両方で、親子のコミュニケーションを深めながら、物語の魅力を存分に味わいましょう。
おしいれのぼうけんを徹底考察!
おしいれのぼうけんを徹底考察!
- トラウマになる?!おしいれのぼうけんの怖さの理由
- 水野先生とねずみばあさんの存在=「理不尽さの象徴」
- おしいれのぼうけんが伝えたいこと
- おしいれのぼうけん教訓
トラウマになる?!おしいれのぼうけんの怖さの理由
『おしいれのぼうけん』は、「トラウマ絵本」としてしばしば話題にされることもありますが、実際には子どもたちが困難を乗り越えて成長していく姿を描いた感動的な物語です。
しかし、お仕置きとして押し入れに閉じ込められる場面や、恐怖の象徴であるねずみばあさんの存在が、子どもたちの心に強烈な印象を残すことは間違いありません。
特に押し入れの暗闇の中で、木目がだんだんと気味の悪いトンネルやねずみばあさんに見えてくる描写は、怖い話に共通する「日常にあるものが恐ろしいものに変わる」という心理を巧みに突いています。暗がりや影が何となく不気味に見えるのは、大人でも経験することがありますが、子どもにとってはなおさら恐怖をかき立てられるポイントでしょう。
また、ねずみばあさんが追いかけてくる場面や、子分のネズミに食べられそうになるシーンは、逃げ場のない緊張感を生み出しています。保育園児という小さな存在にとって、こうした状況はまさに試練であり、読者もそのドキドキ感に引き込まれます。
それでも物語は、怖さを乗り越えたときの達成感や友情の大切さを描くことで、読後に安心感を与えてくれます。怖いながらも夢中になれるストーリー展開は、読者に「恐怖を乗り越える勇気」を教える重要な要素なのではないでしょうか。
『おしいれのぼうけん』の怖さは、単なる恐怖体験ではなく、子どもが自分の内面と向き合い成長する過程を描いたもの。怖さと向き合うことで得られる自信や達成感こそが、本作の魅力であり、多くの読者の記憶に残る理由です。
水野先生とねずみばあさんの存在=「理不尽さの象徴」
『おしいれのぼうけん』に登場する水野先生とねずみばあさんは、別々の存在ではありますが、共通する部分があります。それは「理不尽さの象徴」であるという点です。
水野先生は普段は優しく子どもたちに慕われる存在ですが、悪さをした子どもを押し入れに閉じ込めるという厳しい罰を与えます。
さくらほいくえんには、 こわいものが ふたつ あります。
ひとつは おしいれで、
もうひとつは、 ねずみばあさんです
引用:おしいれのぼうけん
暗闇の中で恐怖を味わう子どもたちは、何に対して謝るべきかも分からないまま、半ば強制的に反省を迫られます。今回の主人公であるさとしも、押し入れに閉じ込められそうになったとき、「おしいれのそとでかんがえるよう」と訴えます。しかし、その意見は聞き入れられることなく、あきらと共に押し入れに閉じ込められてしまいます。
大人や先生という強い権力の前で、自分たちの意見を言えずに謝る子どもたちは、ただ押し入れを「こわいもの」として受け止めます。押し入れに入れられないようにしよう、もし入れられたらとにかく謝ろう——そんな思いに支配されるのです。しかし、さとしとあきらはそうした理不尽さに抵抗し、自分たちの意志を貫こうとします。暗闇の恐怖を乗り越えながら、心を強く持ち続けることを決意する二人の姿は、読者の心を強く打ちます。
一方で、ねずみばあさんもまた、理不尽さを象徴する存在です。人形劇では水野先生が演じる悪役として登場し、子どもたちに人気のキャラクターですが、物語の中では突然現れて、あきらとさとしを追い回します。最後に、ねずみばあさんは二人に「謝れば許してやろう」と迫ります。しかし、二人は自分たちは何も悪いことをしていないと主張し、謝ることを拒みます。この展開は、水野先生やねずみばあさんが象徴する理不尽な恐怖や圧力に対し、二人が抵抗し自分たちの意志を貫く強さを示しています。
理不尽さは、現代を生きる中でも避けられないものです。大人であっても子どもであっても、時に理由の分からない状況や不条理な出来事に直面することが必ず出てきます。そういったときに、自分を見失わず、折れない心を持つことの大切さを、この物語は教えてくれているように思います。
おしいれのぼうけんが伝えたいこと
『おしいれのぼうけん』が読者に伝えたいのは、恐怖や困難に立ち向かう勇気と、自分の意見を貫く大切さではないでしょうか。押し入れに閉じ込められたあきらとさとしは、理不尽な状況に置かれながらも互いに励まし合い、自分たちの気持ちを守ろうとします。特にあきらが「僕たちは悪くない」と強く主張するシーンは、理不尽さに屈せずに立ち向かう強さを象徴しています。
さらに、物語に登場する水野先生とねずみばあさんは、大人を象徴する存在として描かれています。水野先生は子どもたちの意見を聞かず、一方的に押し入れに閉じ込める罰を与えますが、その行為には「大人が決めたルールに従わせる」という理不尽さが感じられます。同様にねずみばあさんも、突然現れて二人を追い回し、理由も曖昧なまま「謝れば許す」と要求するなど、不条理な存在として描かれています。
押し入れに閉じ込められながらも、二人は恐怖と戦い、互いに助け合いながら困難を乗り越えていきます。その姿勢は読者に勇気を与えるだけでなく、子どもたちの視点から大人の姿勢を見つめ直すきっかけを提供してくれるのです。
『おしいれのぼうけん』は、理不尽さに直面したときの子どもたちの葛藤と成長を描くと同時に、大人にもメッセージを投げかけます。水野先生やねずみばあさんを通して、「子どもの声に耳を傾けることの大切さ」を改めて考えさせられる一冊といえるでしょう。
おしいれのぼうけん教訓
上述した通り、『おしいれのぼうけん』は、恐怖や困難に立ち向かう勇気と、自分の考えを貫く強さ、そして素直な心を持つことの大切さを教えてくれる物語です。
物語の中で、さとしはミニカーを取ってしまったことをあきらに謝り、押し入れから出た後には手を踏んでしまった友達にも素直に謝ります。水野先生自身も、「押し入れの外で考えさせればよかった」と反省の言葉を漏らします。負けん気の強いさとしも水野先生も、それぞれが素直に反省をする姿は、素直に謝ることの大切さや成長を教えてくれます。
物語のクライマックスで、さとしとあきらが互いに手を取り合いながらねずみばあさんに立ち向かうシーン。いつもあきらを引っ張っていたさとしがくじけそうになったとき、あきらが「絶対に謝らない、僕たちは悪いことをしていない」とねずみばあさんにはっきりと伝えます。二人の友情と強さが恐怖に打ち勝った場面でもあり読者の心を熱くします。
この物語は、ただ恐怖を乗り越えることだけではなく、互いに支え合うことの大切さを描いています。困難に直面したときにどう行動するか、何を大切にするかを考えるきっかけを与える作品です。
大人もまた完璧ではなく、ときに反省することが必要であるという視点を提示している点も、本作の重要な教訓です。子どもも大人も、それぞれが自分の間違いを認め、よりよい行動を選び取ることができる——そんな希望を感じさせる物語です。
おしいれのぼうけんを読書感想文で書くには?書き方ポイントを解説
『おしいれのぼうけん』は、押し入れに閉じ込められた子どもたちが恐怖や困難に立ち向かいながら成長していく物語です。シンプルな展開の中に友情や勇気、理不尽さへの反抗といった深いテーマが隠されており、読む人によってさまざまな解釈が生まれます。
以下のポイントを押さえて感想文を書くことで、より具体的で印象的な文章に仕上げることができますので是非参考にしてください。
「おしいれのぼうけん」で読書感想文を書くときのポイント
- 最初の印象を述べる
→感想文の冒頭では、絵本を読んだ時の最初の感想や感じたことを素直に書きます。
例:押し入れに閉じ込められるのは怖いけれど、あきらとさとしが強くなっていく姿にワクワクした。
例:ねずみばあさんが怖すぎて、ドキドキしながらページをめくった。でも最後には安心してホッとした。 - 印象に残った場面を選ぶ
→物語の中で特に心に残った場面を具体的に挙げ、その理由を説明します。
例:押し入れの木目が顔に見えてくるところが怖かった。自分も暗い部屋で影や模様が怖く見えたことを思い出した。 - 登場人物の変化に注目する
→感想文では、あきらとさとしが物語を通じてどのように変わっていったのかを分析するのもポイントです。二人がどう成長したのかを考えてみましょう。
例:最初は泣き虫だったあきらが、最後にはねずみばあさんに立ち向かう強さを見せていて驚いた。 - 終わりの場面の解釈
→最後のシーンについて、自分なりの考えや解釈を書くと感想文に深みが出ます。押し入れの中で困難を乗り越えた二人がどんな気持ちで終わったのか、そして読者自身がどう感じたのかを書いてみましょう。
例:ねずみばあさんを乗り越えたことで、二人は強い心を持った子に変わったんだと思う。 - 自分自身の経験や気持ちと結びつける
→物語のテーマを自分自身の経験や考えと結びつけることで、より印象的でオリジナリティのある感想文になります。
例:あきらとさとしのように、自分の意見をはっきり言える強さを身につけたいと思いました。
『おしいれのぼうけん』は、恐怖や理不尽さを乗り越える強さや、仲間と助け合う大切さを教えてくれる物語です。感想文を書く際には、登場人物の変化や印象的なシーンに注目しながら、自分自身の経験や考えと結びつけてまとめると、より深く物語を味わうことができます。
また、大人の視点と子どもの視点で解釈が異なる作品でもあるため、自分自身がどう感じたかを自由に書くことで、オリジナルな感想文に仕上げることができるでしょう。子どもらしい素直な感想や驚きを大切にしながら、物語から得た気づきや学びを表現してみましょう。
読書感想文を書くときにオススメ!
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おしいれのぼうけんは無料で試し読みできる?
『おしいれのぼうけん』はAmazonにてサンプルページの試し読みが可能です。おしいれのぼうけんのイラストの雰囲気や文章の難易度、怖さ等をチェックすることができるので、お子さんにあっているかどうかを確認頂いてからの購入をおすすめします。
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おしいれのぼうけん発売日から半世紀!50周年グッズが発売
絵本『おしいれのぼうけん』の刊行50周年を記念して、新たなグッズが発売されています。
2024年10月には、「おしいれのぼうけん 立体すごろく」と「おしいれのぼうけん トランプセット」が登場。立体すごろくは、絵本の名場面が飛び出す仕掛けで、ピタッとくっつくコマを使い、まるで絵本の中に入ったような臨場感を楽しめます。
トランプセットは、絵本と一緒におしいれのぼうけんのトランプが付いてくる豪華セットです。全て異なる絵柄のカードで構成され、物語のエピソードを思い浮かべながら遊ぶことができます。これらのグッズは、クリスマスプレゼントや年末年始のお土産等に最適です。大人も一緒に遊んで、昔読んだ記憶を思い返してみてはいかがでしょうか。
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可愛すぎる・・・
私がほしい・・・
口コミ&レビュー
『おしいれのぼうけん』は、子どもたちの冒険と成長を描いた絵本として高く評価されています。押し入れに閉じ込められる恐怖や、ねずみばあさんの存在が印象に残る一方で、困難を乗り越える勇気や友情の大切さを学べると好評です。「怖いけれど何度も読みたくなる」「子どもの頃に読んで忘れられない」といった声が多く、大人になって読み返すと新たな発見があるというレビューも。親子で楽しめる長く愛される名作として人気があります。
研究員の独自解説!
ここからは絵本研究員サキの「独自解釈」となります。
自由に語っていきますので、ご容赦ください。
ああ、だしてくれてよかったと、 みんなはほっとします。引用:おしいれのぼうけん
「ごめんね」と いってくれて よかったと、 みずのせんせいも ほっとします。
水野先生は、注意しても騒ぐ子どもたちを押し入れに閉じ込めます。押し入れから出てきた子どもは泣きながら「せんせい、ごめんね」と謝り、見守っていた他の子どもたちは「よかった、出してもらえた」とほっと胸をなでおろします。そして水野先生もまた、子どもが謝ってくれたことで「よかった」とほっとするのです。
この場面を読むたびに、私は親としてハッとさせられます。
子どもが何に対して叱られているのか、本当に理解しているかどうかはともかく、親としてはまず「ごめんね」と素直に謝ってほしいと思ってしまうものです。頭では「謝らせること=教育ではない」と分かっていても、ついその言葉を求めてしまう瞬間があります。謝罪が大人の感情を冷やすための“道具”になってしまうことも少なくありません。特に子どもが反抗的な態度をとると、「どうして素直に謝れないの?」と問い詰めたくなることも……。
しかし、『おしいれのぼうけん』を読んでいると、そんな親の気持ちを少し冷静に振り返ることができます。謝ることはもちろん大切ですが、それだけで終わらせてしまっては、本当の反省にはつながらないはずです。子ども自身が「何がいけなかったのか」をきちんと理解し、大人も子どもの意見に耳を傾けることが同じくらい大切なのだと改めて気づかされます。
この場面は同時に、『大人だって完璧ではない』ということも教えてくれます。押し入れに閉じ込める水野先生は、決して意地悪で悪意のある存在ではありません。普段は子どもたちに慕われる優しい先生です。しかし何度言っても言うことを聞かない子供たちには罰を与えてしまう。本当は水野先生自身も、そんなことをしたくないという葛藤が伝わってきます。そしてあとになって、「押し入れの外で考えさせればよかった」と反省するのです。
子育てをしていると、何度も水野先生と同じような場面に出くわします。「叱りすぎたかもしれない」「もっと別の伝え方があったかもしれない」と反省することは日常茶飯事。押入れに閉じ込めることはしないまでも、ついつい「言うこと聞かないとサンタさん来ないよ!」「駄々こねてたら置いていっちゃうよ!」なんてことを言ってしまうの。理想はあれど、育児は綺麗ごとだけではすみません。
だからこそ、言い過ぎたと感じたときは、水野先生のように、親も素直に謝ることが大切なのだと思います。そんな姿勢が、子どもとの信頼関係を深める一歩になるのではないでしょうか。
この本は、わが子も大好きで4歳から何度も読み聞かせをしています。80ページという長編絵本なので、読むたびに舌が乾き呂律も回らなくなってきますが、それでも「もう1回読んで」とせがまれるほど子どもは夢中です。
きっと理不尽さや友情といった難しいテーマはまだ理解できていないでしょう。それでも、この絵本の持つ「おもしろさ」が心のどこかに残り、いつか大人になってまた読んだときに別の解釈を持ってくれたら、それが何より嬉しいです。
『おしいれのぼうけん』は、子どもだけでなく大人も自分の過去や今を振り返らせてくれる絵本です。
理不尽さや恐怖に立ち向かう勇気、反省する素直な気持ち、そして誰かと手を取り合って乗り越えることの大切さ——そういった普遍的なテーマを描いたこの物語は、読む人の年齢や経験によって解釈が変わる奥深さを持っています。
子どものころはワクワクしながら楽しめる冒険絵本として、大人になってからは自分自身を見つめ直す物語として——時を超えて心に響く名作ではないでしょうか。
【子どものトラウマ】名作おしいれのぼうけんのあらすじから伝えたいことまで徹底考察!の総括
『おしいれのぼうけん』は、子どもの冒険と成長を描いた物語でありながら、大人にとっても育児や教育について深く考えさせられる作品です。押し入れに閉じ込められる恐怖や理不尽さに立ち向かう子どもたちの姿は、折れない心の大切さを教えてくれます。一方で、大人である水野先生も反省し、完璧ではないことを認める姿が描かれています。
この物語は、子どもが何かを学び取るだけでなく、大人自身も自らの態度や言葉を振り返る機会を与えてくれます。理不尽な状況をどう受け止め、どう乗り越えるか——そのヒントが詰まった一冊です。親子で読んで感じ方を語り合うことで、さらに深い気づきが得られることでしょう。
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