怪談えほんシリーズの第一弾となる「いるのいないの」は、その独特な恐怖感とテーマ性で、多くの読者を魅了しています。
本記事では、この作品のあらすじや作者情報、対象年齢、考察、ラストの真相など、詳しく解説します。また、「検索してはいけない」と噂される理由や、シリーズである「怪談えほん」との関連性についても触れていきます。この絵本の魅力を再発見し、深く理解するための一助となれば幸いです。
サキ研究員
怖い絵本好きの私は、子供以上にハマりました。
余白・余韻を楽しむ物語は大好きです。
この記事はこんな人にオススメ
- 「いるのいないの」のあらすじ・内容を知りたい人
- 対象年齢が知りたい人
- 作者:京極夏彦さん、絵:町田尚子さんについて知りたい人
- 怪談えほんシリーズについて知りたい人
- 怖い・トラウマの理由を知りたい人
- ネタバレ・考察・ラストについて知りたい人
- 口コミや試し読みについて知りたい人
目次
いるの いないののあらすじ・内容
「いるのいないの」は、懐かしくも不気味な日本の古民家を舞台にした物語です。主人公の少年は、しばらくの間、おばあさんの古い家で暮らすことになりました。おばあさんの家は木造で、天井は高くて昼間でも薄暗く、「何か」を感じさせる不思議な空間が広がっています。京極夏彦の文章と町田尚子のイラストが描き出す、この空間の「こわさ」は、大人でもゾクッとするほどです。
ある日、少年はその家の梁(はり)の上の暗がりに、怒った男の顔を見つけてしまいます。その顔を見た少年は恐怖に駆られ、庭にいたおばあさんのもとへ駆け出しました。
少年は「天井の梁の上に誰かがいる」と訴えます。しかし、おばあさんはその話を聞いても驚くことなく、「見たのなら、誰かがいるのだろう」と落ち着いた口調で答えます。さらに、おばあさんは「見なければ怖くないのだよ。見なければ、いないのと同じだ」と淡々と言うのでした。
それでも少年はどうしても天井の暗がりが気になってしまいます・・・。
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作者情報:京極夏彦
京極夏彦氏は、1963年に北海道に生まれた小説家、デザイナー、そして妖怪文化の研究家としても知られる多才なクリエイターです。彼の文学作品は、ホラーや怪談を中心に展開され、重厚なテーマと膨大なリサーチに基づく独特の文体が特徴です。その作品は、ただ怖いだけでなく、歴史や文化、そして人間心理への深い洞察を伴っており、読者に知的な満足感を与えます。
代表作『百鬼夜行シリーズ』は、妖怪小説とも呼びえるオカルト要素を取り入れながらもミステリーとしての謎解きもあり、京極氏ならではの重厚な物語構築と人間の心理描写、キャラクターたちの魅力が高く評価されています。
妖怪研究家としても第一線で活動しており、日本の妖怪の魅力を国内外に広める役割を果たしています。
意外にも、"怪談"を作るのは本作「いるのいないの」が初めてだそうです。しかし、彼の妖怪や怪談に対する深い理解が存分に発揮されており、シンプルな物語ながらも濃密な心理的恐怖を体験できる仕上がりになっています。この絵本は、京極氏の新たな挑戦として、多くの読者を魅了し続けています。
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絵:町田尚子
「いるのいないの」の絵を手がけた町田尚子さんは、絵本作家・イラストレーターとして幅広い作品を手がけています。彼女の代表作には、留守番中の猫を描いた「ねこはるすばん」や、数々の賞を受賞している「なまえのないねこ」などがあります。これらの作品では、かわいらしい猫の仕草や表情がリアルに描かれ、読者をほっこりさせる作風が特徴です。
しかし、町田さんが普段描く愛らしい猫たちが、「いるのいないの」では一転。不気味で異質な存在へと変貌する様子には、彼女の卓越した表現力を感じずにはいられません。その柔らかな筆致で描かれる日常の猫たちが、物語の中でどこか不穏な影を落とす存在に変化することで、読者の心に強い印象を残します。このギャップを巧みに生み出す町田さんの技量は、物語全体の緊張感や雰囲気を支える重要な要素となっています。彼女の作品が持つ多面的な魅力が、この絵本に深い味わいと不気味さを与えているのです。
京極夏彦氏の物語と見事に調和し、「いるのいないの」の世界観を深めています。
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怪談えほんシリーズとは?シリーズ企画監修は東雅夫さん
幼いころから怪談に親しむことによって、子どもたちは豊かな想像力を養い、想定外の事態に直面しても平静さを保てる強い心を育み、さらには命の尊さや他者を傷つけることの怖ろしさといった、人として大切なことのイロハを自然に身につけてゆくのです。
シリーズ企画監修/文芸評論家 東雅夫さん
本作「いるのいないの」は怪談えほんシリーズの第一弾として発売されました。怪談えほんシリーズは、子どもたちに恐怖を感じさせるだけでなく、そこから得られる学びや成長の機会を提供してくれます。東雅夫氏の監修のもと、幼いころから怪談に親しむことで、子どもたちは想像力を豊かにし、予測不能な状況にも冷静に対応できる強さや、命の尊さ、他者への思いやりを自然と身につけることができます。
また、怪談えほんシリーズに参加する作家や画家たちは、日本を代表する芸術家であり、それぞれが独自の感性を注ぎ込んでいます。物語の怖さを際立たせると同時に、その背後に潜む深いテーマを巧みに描き出す点が、シリーズの特長です。宮部みゆき、京極夏彦、恩田陸、夢枕獏といった多彩な作家陣が紡ぎ出すストーリーは、恐怖と同時に考えさせられる深みを併せ持ちます。
一方、町田尚子や伊藤潤二・軽部武宏らが手がける絵は、物語の世界観をさらに奥行きのあるものにし、読者の心に強く訴えかけます。こうして、シリーズ全体が子どもから大人まで幅広い読者に向けて、感情を揺さぶる特別な体験を提供している点が、この絵本シリーズの最大の魅力です。
日本を代表する芸術家の作品に幼いころから触れることによって、大きくなって小説を読んだり日本文化を学んだりするきっかけになるかもしれません。
シリーズ | 発売日 | タイトル | 作者 | 絵 |
第一弾 | 2011年10月31日 | 悪い本 | 宮部みゆき | 吉田尚令 |
2011年10月31日 | マイマイとナイナイ | 皆川博子 | 宇野亜喜良 | |
2012年2月10日 | いるの いないの | 京極夏彦 | 町田尚子 | |
2012年2月29日 | ゆうれいのまち | 恒川光太郎 | 大畑いくの | |
2012年3月15日 | ちょうつがい きいきい | 加門七海 | 軽部武宏 | |
第二弾 | 2014年7月31日 | かがみのなか | 恩田 陸 | 樋口佳絵 |
2014年8月31日 | おんなのしろいあし | 岩井志麻子 | 寺門孝之 | |
2015年9月30日 | くうきにんげん | 綾辻行人 | 牧野千穂 | |
2015年5月31日 | はこ | 小野不由美 | nakaban | |
第三弾 | 2019年7月31日 | まどのそと | 佐野 史郎 | ハダタカヒト |
2020年1月31日 | おろしてください | 有栖川有栖 | 市川友章 | |
2021年1月31日 | いただきます。ごちそうさま。 | あさのあつこ | 加藤休ミ | |
20215年月31日 | おめん | 夢枕獏 | 辻󠄀川奈美 | |
怪談えほん コンテスト | 2024年2月29日 | こっちをみてる。 | となりそうしち | 伊藤潤二 |
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いるのいないのは何歳向け?
「いるのいないの」は、小学生から大人まで幅広い層が楽しめる作品です。独特な雰囲気や、物語の中に意図的に設けられた余白は、子どもだけでなく、大人にとっても考えさせられる魅力があります。不気味で恐怖を誘う内容のため、怖がりやすい子どもには、夜の読み聞かせには配慮が必要かもしれません。しかし、少し大人びた感性を持つ子どもやホラーが好きな親子には、スリルとともに物語の奥深さを楽しむことができる刺激的な一冊です。
また、この絵本はただ怖がらせるだけでなく、読み手によってさまざまな解釈が可能な点も魅力です。親子で一緒に読みながら感想を共有したり、怖さの正体について話し合ったりすることで、物語の新たな一面が見えてくるでしょう。子どもにとっては刺激的な読書体験、大人にとっては懐かしさや深い考察を味わえる特別な一冊です。
ただの木目が何かの形に見える恐怖は、名作「おしいれのぼうけん」でもありますよね。
【ネタバレ】ラストで梁にいるのは誰?!最後の真相と「いるからね」についての考察
『いるのいないの』は、見えない存在への恐怖をテーマに、人間の想像力や心理の深層を描いた物語です。作品全体を通して、天井裏の暗がりに潜む「誰か」の存在が大きな鍵となっています。しかし、その正体は最後のページまで明かされず、読者は少年が天井に見たものや、彼が突然おばあさんの家で暮らし始めた理由、家中にいる大量のネコなどから、何とも言えない不穏さを感じ取ることになります。
「いるのか? いないのか?」と胸が高鳴る展開の末、物語は最後のページでクライマックスを迎えます。少年が天井を見上げると、梁にたたずむ男の顔がはっきりと描かれ、「いるからね」という一文で物語は幕を閉じます。
この男の正体については最後まで明言されていません。幽霊なのか、泥棒なのか、それとも本当にそこにいるのか──。確かな答えは示されません。しかし、この曖昧さこそが、「この世には不思議なことがたくさんあり、自分の“普通”や“当たり前”が通じない出来事が実際に起こる」というメッセージを投げかけています。
少年が突然おばあさんの家で暮らすことになり、彼自身の心に潜む不安や孤独が隠されているかもしれませんし、その「誰か」は、未知なるものへの畏怖や不安の象徴として現れたと解釈することもできます。
ラストで少年が見た「誰か」は、恐怖の具現化でありながら、それが何を意味するのかはあえて明示されていません。その姿は幽霊にも、泥棒にも見えます。この曖昧さによって読者は、自身の経験や感情を物語に重ね合わせ、多様な解釈をする余地を与えられます。その結果、『いるのいないの』は単なる怪談を超え、恐怖の本質や人間の心の奥底を考えさせる深い作品に仕上がっています。
子どもの豊かな感受性を信じ、大人が一方的に「幽霊なんていない」「幽霊は怖い」と決めつけるのではなく、この物語を通じて多様な考え方や想像力を育むことの大切さを教えてくれる作品です。
作者:京極夏彦さんがラストにかけた想い
『いるの いないの』に登場する最後の男について、作者の京極夏彦氏はインタビューで、その存在をあえて定義付けない姿勢を示しています。この男が幽霊なのか、人間なのか、それとも別の何かなのかは明確にされておらず、読者が自由に解釈できる構造となっています。
京極氏によれば、子どもにとって「怖さ」とは、幽霊やお化けといった具体的な形を持たないことが多いそうです。幼い子どもは「幽霊」という概念そのものを知らないため、ただ「何か変なものを見てしまった」という感覚だけが残ります。
一方、大人はそれを「幽霊だ」「見間違いだ」といった具合に定義づけることで理解しようとします。京極氏は、怖さには多様性があり、その怖さを知ること自体が大切だと語ります。「幽霊=怖い」と単純に決めつけず、「怖い思いをした」という感覚に向き合い、なぜ怖いのかを自分なりに考えることが重要だとしています。
『いるの いないの』における男の存在は、「幽霊だから怖い」といった単純な恐怖の図式に頼るのではなく、見えないものや理解できないものへの漠然とした不安感、つまり「怖い」という感情そのものを再考するきっかけとなるのではないでしょうか。そのため、読む人それぞれによって男の正体やその意味が異なる解釈を生むこと自体が、この物語の本質的な魅力と言えるのです。
※参考:岩崎書店「怪談えほん」特設ページ いるのいないの刊行記念スペシャルインタビューより
絵本いるのいないのは怖すぎる?! 検索してはいけない言葉にもなった
『いるのいないの』は、検索クエリの二語目に「検索してはいけない」と表示されるほど、いわゆる「検索してはいけない言葉」の一つとして知られています。「検索してはいけない言葉」とは、インターネット上で検索すると、不快感や恐怖を引き起こす画像や動画、精神的に影響を与える情報が表示される可能性が高く、注意が必要とされる言葉を指します。
この絵本は子ども向けでありながら、ラストのページに登場する男の顔がネット上で共有され、そのインパクトがあまりにも強烈であることが「検索してはいけない」とされる理由の一つです。この男の顔は異様な存在感を放ち、見る人の想像力を刺激する不気味さが特徴です。物語を通じてじわじわと高まる恐怖が、最後のページで頂点に達し、その衝撃は読後も読者の心に深く刻まれます。
また、この「最後の男」だけでなく、天井を見上げる少年の表情自体が「怖い」といった口コミも多く見られます。恐怖を感じながら天井を見上げる少年の不安げな表情には、不気味さが漂い、読者をさらに不安にさせます。これらの要素が重なり、『いるのいないの』は「検索してはいけない言葉」として知られるようになったのです。
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口コミ・評判
『いるのいないの』の口コミには、作品の雰囲気や描写に関する高評価が多く見られます。特に古い日本家屋を舞台にした独特の世界観や、絵の細部に至るまでの緻密な描写が「恐怖感を増幅させる」と好評です。
読者の間で特に話題となっているのは、ラストページの男の顔の描写で、「夢に出てきそう」「強烈な印象を残す」といった感想が多く寄せられています。また、天井を見上げる少年の表情についても「怖さを引き立てる要因」として注目されています。
全体的に「じわじわと怖さが広がる」「読後に心に残り続ける」といった声も多く、ただ怖いだけでなく、物語や絵が読者の想像力を大いに刺激する点が評価されています。一方で、「子ども向けとは思えないほど怖い」と感じる人もおり、その独特な怖さが作品の魅力として支持されています。
いるの いないのは無料で試し読みできる?
『いるの いないの』はAmazonにてサンプルページの試し読みが可能です。いるの いないののイラストの雰囲気や怖さをチェックすることができるので、お子さんにあっているかどうかを確認頂いてからの購入をおすすめします。
また、公式サイトでは怪談えほんの特設ページも用意されており、絵本の内の数ページを確認することも可能です。他シリーズの雰囲気を閲覧することもできますので、是非チェックしてみてください。
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【閲覧注意】「いるの いないの」のラストをネタバレありで徹底考察!最後に現れる『誰か』の正体と怖すぎる理由の総括
京極夏彦氏が手がけた絵本「いるの いないの」は、絵本という枠を超えた恐怖体験を提供する作品です。その独特な世界観や深いテーマ性、そして解釈の幅広さは、大人から子どもまで幅広い読者層を魅了しています。
「怪談えほん」シリーズの一環として発表されたこの作品は、絵本の新たな可能性を示した一冊とも言えます。この絵本は単なる怖い話ではなく、子どもから大人までが未知なるものや恐怖の本質に向き合うきっかけを与える、深みのある一冊です。
まだ読んだことがない方は、ぜひ手に取ってその魅力を感じてみてください。そして、あなた自身の解釈でこの物語の真相を紐解いてみましょう。
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