日常の風景が、ふとした瞬間に不気味に感じたことはありませんか?
誰もが慣れ親しんだ風景や出来事の裏側に、何か異質なものが潜んでいるように思える瞬間。それを鮮やかに描き出したのが、イシズマサシ氏の絵本『あっちがわ』です。
『あっちがわ』が持つ魅力と、不気味でありながらも考えさせられる物語の数々を、あらすじや考察を交えて詳しくご紹介します。この不思議な世界を、ぜひ一緒に覗いてみませんか?
この記事はこんな人にオススメ
- 「あっちがわ」のあらすじ・内容を知りたい人
- 作者:イシズマサシについて知りたい人
- 物語の解説が聞きたい人
- あっちがわの怖さの理由を知りたい人
- 口コミや試し読みついて知りたい人
- あっちがわ展が気になる人
目次
あっちがわのあらすじ・内容
『あっちがわ』は、一話一見開きで展開される15の短編から構成されています。各話では、日常の中に潜む異質な出来事や不気味な存在が描かれ、読者にじわじわとした恐怖を与えます。
「かげ」では、通り過ぎても引き返しても目の前にいる自転車に乗る真っ黒な人影、「みどりのしょうぼうしゃ」では見慣れない緑色の消防車が登場し、日常の風景に違和感をもたらします。これらの物語は、明るい昼間の風景の中で展開されるため、読者はより一層の不安感を覚えることでしょう。
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作者:イシズマサシさん
イシズマサシ氏は、1963年広島県生まれの作家です。本名は石津昌嗣。武蔵野美術大学を卒業後、グラフィックデザイナーとして活躍し、その後海外を放浪するなど、多彩な経験を積んできました。もともと怖い話が好きだったというイシズ氏は、本作を楽しみながら制作したそうです。代表作には『ぼくはダンサー』があり、その独特な視点と豊かな表現力で読者を魅了しています。
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何歳から読める?あっちがわの対象年齢
『あっちがわ』は、絵本という形式ながら、大人でも恐怖を感じるほどの内容を持つ作品です。一つ一つの話が短いため、幼児への読み聞かせも可能ですが、一般的には小学校高学年以上の子どもから大人まで、幅広い年齢層が楽しめる絵本といえるでしょう。
本作の魅力は、ただ怖いだけではなく、物語に多くの余白がある点にあります。結末や背景が明確に描かれないため、読者自身の解釈に委ねられる部分が多く、自ら考える力が育つ年代の読者に特におすすめです。
また、想像力が豊かな読者にとって、日常と非日常の境界が描かれたこの作品は、強く心に残る一冊となるでしょう。読み終えた後も、物語の不思議な余韻に浸り、何度もページをめくりたくなる魅力を持っています。
【ネタバレあり】絵本「あっちがわ」を深堀り考察
『あっちがわ』は、日常の中に潜む異質な世界や存在(オカルト)を描くことで、読者の想像力を刺激する作品です。各話の結末は明確に語られず、読者自身の解釈に委ねられる部分が多いため、読む人によってさまざまな解釈や感想が生まれるでしょう。
物語の多くは、一見すると何気ない日常の延長にあるように描かれており、それが不気味さをより一層引き立てています。ふと目にした日常的な風景が、実は「こちら側」と「あちら側」を隔てる境界線だったような感覚を呼び起こし、読者は物語の世界と現実との間で揺さぶられます。
例えば、夏の夕暮れどきに感じる物悲しさや、カラスの鳴き声、自転車のきいきいという音、友達の顔がふと不気味に見える瞬間。「なんとなく怖い」という感覚は誰しも経験があるのではないでしょうか?本作は、そうした日常の中に潜む不思議な感覚を巧みに切り取り、読者に思い出させてくれます。
また、本作に登場する「異質なもの」はどこか抽象的で、太陽に続くリフトやみどりのしょうぼうしゃといった描写に、明確な意味を持たせていない点が本作の大きな特徴の一つです。読者の多くが「意味はよくわからないけれど、なんとなく怖い」と感じる作品であり、その曖昧さが本作の魅力ともいえるでしょう。
例えば15の物語の一つ「みんとくん」では、丘に咲くしろつめくさの中に、みんとくんという男の子が混ざっていました。主人公が近づくと「水を持ってきて」「かけて」と頼み、水をかけると嬉しそうに笑います。しかし、ある日丘を訪れると、「みんとくんはかれていた。」という一文で物語は終わります。みんとくんとは何者だったのか――その謎を残したまま物語は静かに幕を閉じるのです。
そんなわけで、本作においては「考察を行うのはかえって野暮」といえる部分もあります。近年の作品では、すべてをわかりやすく説明し、明確に結論付けるスタイルが主流となりがちですが、『あっちがわ』はその流れに逆らう、一風変わった魅力を持っています。その曖昧さや余韻こそが、現代の作品の中で異彩を放つポイントといえるでしょう。
みなさんもこの物語に触れて、自分だけの「あっちがわ」を思い返してみてはいかがでしょうか?
【トラウマ】未知への恐怖が育む想像力
「想像力があれば、どこまででも恐怖は生まれるんですよ。恐怖って大人が説明して与えるものではなく、こういうものをきっかけとして頭の中で作られていくものだと思うんです」
引用:産経新聞「イシズマサシさん『あっちがわ』 想像力が生み出す恐怖」
人間は「分からない未知なもの」に恐怖を感じることが多いものです。未来について「失敗したらどうしよう」「大きな災害が起こったらどうしよう」といった漠然とした不安も、未来がどうなるか「分からない」ことから生じる恐怖です。本作『あっちがわ』は、まさにその未知への不安を呼び起こす物語といえます。
物語に登場する黒目がない不気味な男の子(しろちゃん)や「みどりのしょうぼうしゃ」といった描写は、日常と非日常が曖昧に交錯することで、読者の不安感を刺激します。それが「これは何を意味しているのだろう?」という未知の恐怖へとつながるのです。
本作は、恐怖が未知や想像の余地から生まれるものであることを改めて思い出させます。分からないものに恐怖を感じるのは人間の本能ともいえるでしょう。『あっちがわ』は、恐怖や不安が悪いものではなく、想像力を育てるための一つのきっかけになることを教えてくれる物語です。子どもたちが感じる「わからない」や「不思議」という感覚を、そのまま受け入れ、一緒に楽しむことで、彼らの豊かな心をサポートできるかもしれません。
『あっちがわ』に秘められた戦争の記憶と恐怖
『あっちがわ』は、作者イシズマサシ氏の幼少期の恐怖心や戦争体験が色濃く反映された作品です。広島出身のイシズさんは、戦後18年の広島で、原爆への恐怖心を抱きながら成長しました。その深層心理に根付いた恐怖が、作品の随所に表現されているそうです。
例えば、焼きついた影や湧き上がるきのこ雲、病棟で頭に包帯を巻いた少女、防空壕の穴、青空に向かって行進する群衆などのイメージは、戦争や原爆の記憶を想起させます。これらの描写は、読者に漠然とした不安感や恐怖を与え、日常と非日常の境界を曖昧にすることで、独特の不気味さを醸し出しています。
このように、『あっちがわ』の怖さは、作者自身の恐怖体験や広島での記憶が深く関係しており、それが作品の深みと独特の雰囲気を生み出しているのです。
※参考1:毎日新聞社「今週は…作家に聞く」
※参考2:中国新聞「『想』 イシズマサシ あっちがわ」
あっちがわは無料で試し読みできる?
『あっちがわ』は残念ながらサンプルページが用意されていませんでした。物語の雰囲気を知りたい方は、YOUTUBEにPR動画がアップロードされていますので、是非チェックしてみてください。
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口コミ&レビュー
『あっちがわ』は、不条理で不思議な世界観が幅広い世代に共感を呼ぶ作品として高く評価されています。「読後に不安が残る」といった声がある一方で、主人公のしろちゃんに対しては、「不気味だけれどどこか可愛らしい」という感想も多く寄せられています。その独特な魅力が多くの人を惹きつけ、作品展が開かれるのも納得の一冊です。
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【国内外で人気】あっちがわ展とは
『あっちがわ展』は、2023年に東京タワー内のギャラリーで初開催され、多くの来場者を魅了しました。さらに、2024年6月8日から6月30日には、内容をさらに充実させた『あっちがわ展2』が同じく東京タワーで開催され、大きな話題を呼びました。
展示会では、原画の展示やしろちゃんグッズの販売、「あっちがわ」の新作を紙芝居として上映するなど、作者イシズマサシ氏が描く緻密で不気味な世界観をより深く体感できる内容となっていました。
『あっちがわ』は国内外で高い評価を受けており、特に海外では「想像力を刺激する新感覚のホラー絵本」として注目されています。
現在、展示会は終了していますが、全国各地での開催を望む声が多く寄せられています。『あっちがわ』の魅力をさらに多くの人に届ける新たな展開に期待が高まります。不思議な絵本の世界に足を踏み入れる特別な体験を、より多くの方々が楽しめる日が来ることを願っています。
「あっちがわ」の不気味なあらすじとネタバレ考察で異質な世界への総括
『あっちがわ』は、日常に潜む異質な世界を描き、未知への恐怖や想像力を刺激する絵本です。広島出身の作者イシズマサシ氏の戦争体験や幼少期の記憶が反映された不気味で抽象的な描写が特徴で、読者に恐怖と不思議な感覚を呼び起こします。
具体的な説明を避け、読者に解釈を委ねるスタイルは、想像力を育むきっかけとなり、幅広い世代の心をつかむ魅力となっています。作品の曖昧さや余韻が、深い印象を与え続ける一冊です。
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